2012/05/18

2012年春、東北被災地域を巡って



 5月の連休、京大こころの未来研究センター教授の鎌田東二さんと共に東北被災地第3回追跡調査を行った。青森県八戸市から、福島県南相馬市まで6日間をレンタカーで巡った。これまでの2回の追跡調査では、宮城県仙台市から東海岸を北上して岩手県久慈市までの行程であったが、今回は、北から南へのルートをとることで、これまで気づかないことが多々あった。東日本大震災と福島原発事故から1年以上経つが、復興への道のりは、まだまだ遠いという印象を強く持った。
 51日、八戸駅で鎌田さんと合流し、レンタカーを借り東北被災地追跡調査へと出立。八戸市の中心部にある長者山新羅神社を参拝。 境内は桜が満開、花見客で賑わっていた。社殿の裏に不思議な石が祀られていた。その後、港近くの鯉のぼりが舞う三嶋神社へ。摂社の薬師神社の祠の中にも石が祀られていた。その後、ウミネコ繁殖地でもある蕪島神社、西宮神社を巡拝。西宮神社の前には、鯨が石になったという伝承を持つ鯨石がある。なるほど、鯨の形に似ている。白浜海岸で禊をするが、冷たさが半端ではなかった。弁天島(ウミネコ繁殖地)、泊川神社を巡り、久慈市の小袖海岸のつりがね洞へ。つりがね洞と呼ばれる奇岩は、天井部分から釣り鐘の形をした岩がぶら下っていたことから、この名前が付いた。しかし、釣り鐘の岩は、明治29年の津波で流されてしまい、今は大きな洞穴だけが残っている。洞穴の下まで行くと、洞穴の奥に立岩があり、まるで陰陽を現しているように見え迫力があった。
長者山新羅神社
長者山新羅神社の本殿裏に祀られた石
三嶋神社の摂社、薬師神社の中の石
三嶋神社
蕪島神社
蕪島のウミネコ(年間1万羽が生まれる)
西宮神社
西宮神社の鯨石
つりがね洞
つりがね洞から見える立石
52日(水)晴。早朝から久慈市大目川にある松のご神木と山神さんを参拝。鎌田さんお気に入りの茅葺き屋根に生えた松は、数十年たっているという。九戸郡野田村野田の愛宕神社と海蔵院を参拝する。愛宕神社の赤い大鳥居の近くにプレハブの仮設店舗が建てられていた。三陸鉄道北リアス線の列車も一部を除き開通。下閉伊郡普代村堀内の夫婦岩を遥拝し、下閉伊郡田野畑村北山の断崖絶壁の景勝地、北山崎へ。宮古市田老の港近くでは魚加工施設を建設中。宮古市の月山(455.9m)山頂の月山神社を参拝。下閉伊郡山田町船越の荒神社を参拝、境内に二代目の力神石が祀られていた。荒神社近くの弁天島を拝しながら禊をし、最後に上閉伊郡大槌町の仮設住宅を訪問し被災者のお話を伺う。
茅葺き屋根から生える松
山神社
愛宕神社の大鳥居
大鳥居の近くにできた仮設の店舗
堀内の夫婦岩
上山崎の奇岩群
田老港近くにできた魚加工場
荒神社
荒神社境内の二代目力石

荒神社近くの弁天島
 53日(木)雨。釜石市桜木町にある新日本製鐵株式会社棒線事業部釜石製鐵所山神社を参拝し、隣の仮設住宅サポートセンターでお話を聞く。大船渡市の天神山公園にある天照御祖神社を参拝する。神社がある高台への石段の中腹に岩戸のような岩と石積があった。宮司によれば、これは、天照御祖神社の本宮があった岩戸とのこと。陸前高市広田の慈恩寺を参拝し、ご住職にお話を伺う。境内の海が見える場所に新たな祈念碑「やすらぎ」碑を建立し、3月11日に開眼供養を行なったという。最後は、気仙沼市の紫神社を参拝し、隣の金光教気仙沼教会教会長にお話を伺う。気仙沼港近くの食堂で夕食を済ませると、従業員の女性はインスタントコーフヒーをサービスしてくれ、昨年の3.11の地震と津波の時の生々しい体験談を話してくれた。夜になり、一層、風雨が激しくなり、まるで台風のようだ。
新日本製鐵株式会社棒線事業部釜石製鐵所山神社
山神社に奉納された鉾
仮設住宅サポートセンター
              
天照御祖神社
天照御祖神社の元宮があった岩屋
慈恩寺境内の「やすらぎ」碑
 54日、雨。気仙沼港からフェリーで大島へ渡る。薬師神社への道を迷っていると、あるおじさんが案内すると行って車に乗り、津波のことを話してくれる。薬師神社は元々薬師寺で神仏習合の名残があった。大島の南端、竜舞崎には陽石が祀られ、近くの乙姫窟には、荒波が寄せては返していて、まさにホト(女陰)的な空間で、穴の輪郭が猫に見えた。大島神社(延喜式内社)に行き、ご神体の磐座を参拝させていただき、宮司のお話を伺う。大島で最も高い亀山(235m)へ。山頂付近で鹿を見る。山頂の愛宕神社をお参りする。その後、フェリーで気仙沼港に戻り、気仙沼市波路上牧にある地福寺をお参り住職のお話を伺う。地福寺は、津波がお寺の一階の天井近くまで来たが、建物は残り再建できたという。近くの岩井崎の琴平神社を参拝し、岩井崎へ。龍のような松の木があった。その後、石巻市の釣石神社をお参りする。神社の禰宜さんにお会いし、お話を聞くと、今年の正月は昨年以上の参拝者が来たという。昨年末にできた仮設の社務所と他、仮設トイレもできたが、かつて住居が密集していた場所は更地のままであった。その後、雄勝町の葉山神社を参拝し、石峰山石神社を遥拝する。
薬師神社
陽石神社
乙女窟
乙女窟の洞穴(猫)
竜舞岬の岩
大島神社
地福寺
岩井崎の海
岩井崎の龍松
釣石神社
女岩に巻かれた合格祈願の絵馬
55日(旧暦315日)、雄勝町大須地区の大須八幡神社の例大祭があり、東日本大震災の影響で昨年できなかったお神輿渡御が行われた。その後、雄勝法印神楽が奉納され地元住民や遠方から多くの見物客が集っていて、雄勝法印神楽を支援されている漫画家の岡野玲子さん、ヴィジュアリストの手塚眞さんも来られていた。お神楽奉納は、とても盛り上がり楽しい一時であった。
夕方、仙台へ移動し、鎌田さんはFM仙台のラジオ番組「Café de Monk」の収録へ。

大須八幡神社の例大祭の幟
お神輿渡御
雄勝法印神楽
雄勝法印神楽
雄勝法印神楽
 56日(日)、曇りのち晴のち、雷のち晴。
早朝、宮城郡七ヶ浜町の被災地域を見ながら鼻節神社を参拝すると、灯篭が修復されていた。浪分神社を参拝し、若林地区を巡る。海岸に近いある仮設寺院で、法要が行われていた。名取港周辺を見て、古墳のような日和山富士主姫神社をお参り。南相馬市の小高神社、鹿島御子神社、相馬市の相馬中村神社を巡拝する。鹿島御子神社の境内には、要石があった。最後は、浪江町から相馬市に避難し、一軒家を仮設のお寺としている熊野山蓮華院清水寺の住職のお話を伺う。今回、福島原発より20kmにある検問所まで車で近づくと、検問にあたっているのは20歳代の若者達であった。また、原発から20kmから30kmまでは、一時帰宅はできるものの宿泊ができず、まるでゴーストタウンのようだった。相馬市から福島市への道中、霊山パーキングで線量を測ると、 1.4マイクロシーベルト(ガンマ線)もあり、その高さに驚く。

七ケ浜の鼻節神社
名取市の日和山富士主姫神社の供養碑
南相馬市の相馬小高神社
南相馬市の鹿島御子神社
鹿島御子神社の要石
相馬市の相馬中村神社
福島駅近くのレンタカー屋さんで車を返し、女性従業員の方に車で駅まで送ってもらっている時、鎌田さんは、「放射能のことは心配ないですか?」と尋ねた。すると、運転する若い女性は、「もう手遅れです。私たちはすでに被爆しています。福島のスーパーでは福島産のものしか、売っていないので、これを食べるしかないのです。」
彼女の話を聞いて、とても辛いもの感じた。
福島駅東口で、放射線量を計ると0.95マイクロシーベルトだった・・・・。
福島駅東口
福島駅東口
           
東日本大震災、原発事故の復興を祈念しつつ・・・・。
                   平成24年5月18日  須田郡司 拝