2009/08/05

フランス、大天使ミカエルを奉る岩山

 8月1日

 レンヌ駅近くのモン・サン・ミッシェル行きのバスターミナルで待っていると、次から次へと日本人がやって来た。 バスの9割くらいは、日本人だった。これまで私は、フランスを3度訪れていたが、モン・サン・ミッシェルは初めてで、これほど日本人に人気のスポットだとは知らなかった。
7年ほど前に訪ねた事のある妻は、フランスに来た人はパリとモン・サン・ミッシェルに行くのは、お決まりのコースで、パリから一日かけてモン・サン・ミッシェルに来るくらい人気があるのだという。

 一時間あまりで、バスはモン・サン・ミッシェルに到着する。入口の駐車場には、乗用車、キャンピングカー、バスなどがたくさん停まっていた。
遠くから見ると、まるでピラミッドのようにも見えて実にかっこよい。写真では何度も見たことがあるが実際に見ると、やはり何とも魅力的だ。

門から中に入ると、お土産屋にレストランが並んでいて、まるでどこかのテーマパークにいるような気分になった。 狭い道には、山を上る人々と下る人々が、肩を狭めながらすれ違っていた。まるで、原宿の竹下通りを歩いているようだ。
長い行列を30分ほど待って、修道院跡に入場する。
 この岩山はトンブ山と呼ばれ、アヴァランシュの司祭オベールにより708年にこの山に大天使ミカエル (サン・ミッシェル)を奉る聖堂が建設されたことが始まりだという。
トンブ山は、すぐに巡礼地となり、10世紀にはベネディクト会の修道僧がそこに居を構えると、山の下方には村が広がった。
 中世において、ミカエルは特別な宗教的観念があった。新約聖書においてミカエルは、ヨハネの黙示録に登場し、悪魔の象徴である竜と戦いそれを打ち倒した。また、来世への不安を抱えながら生きていた中世の人々にとってミカエルは、死者を導き、最後の審判を迎えた日に魂を癒すとされていた。
その後、イギリスとの100年戦争の際に侵攻されなかったこともあって、山を守り続けたという事実も手伝い、ミカエルへの崇拝観念は特殊な次元になっていったという。
    ミカエルの像
 モン・サン・ミッシェルは、病が治るという数々の奇跡もあり、様々な階層の人々の巡礼地として信仰されていた。お土産を買うことが出来ない貧しい巡礼者達は、海辺で貝殻を拾って持ち帰ったという。
 モン・サン・ミッシェルは、ピラミッド型のトンブ山の形を考慮しながら花崗岩の周囲を包み込むように、修道院が建設されたというが、正面から見ると建物に覆われていて僅かしか岩は見えなかった。しかし、下に戻り岩山の周囲を巡っていると後ろから岩盤がはっきりと見えた。
 岩場の近くの砂地には、人々は裸足になって気持ちよさそうに歩いている。遠くに、修道院の女性達が砂地を歩いているのも見えた。この砂地を歩く事で、人々は身を清めているようだ。

 このモン・サン・ミッシェルがこれほど多くの人々をひきつける魅力とは、一体何なのだろう。
遠くから眺めると、まるで海に浮かぶようピラミッドに見える。
この聖地的景観が、時代を超えて人々をひきつけているように思えてならない。

               イギリス、ロンドンにて 郡司 拝