2009/07/17

イタリア、天国の石切り場

7月16日
 ナポリからのフェリーがカターニアの港に入港したのは午前9時を回っていた。カターニアは、シチリア島の東部、イオニア海岸の中央にありヨーロッパで最も高い火山であるエトナ山(標高3350m)の低斜面から海の間に広がっている。
 シラクーザの街にネアポリ考古学公園にディオニッソスの耳という巨大な洞窟がある。私は、その洞窟をめざし、カターニアからシラクーザ行きのバスに乗った。1時間半ほどでシラクーザの街に到着し、昼食を食べてネアポリ考古学公園に向かう。
 チケットを購入し、入口から少し下り緑のトンネルを歩くと巨大な縦穴が空いた洞窟が現れた。高さ約23m、奥行き約65mもの大きさの洞窟、これがディオニソスの耳かと圧倒されながら見上げていた。

ここはパラティーソの石切り場で元々ギリシャ時代の神殿を建てるための石切り場であった。
この穴の形が耳の穴に似ていることから「ディオニソスの耳」と呼ばれている。
ディオニソス(前405~367)は、シラクーザの君主で猜疑心が強くいつも命の危険を感じていた。そこで、彼はこの洞窟が特に反響がよいことを利用して、囚人や捕虜を洞窟に閉じ込め、彼らの話を聞いていたという伝説がある。

実際に洞窟に入ると、音の反響が凄かった。観光客は声をあげたり、歌ったりして反響を楽しんでいた。

 1693年、この地方に大地震があり天井が崩れ岩の天蓋が現れた。これを見たナポリの画家カラヴァッシュが「天国の石切り場」と名付けた。
石切り場跡は、掘り出されたドーム状の空間や残された石の塔があり、辺り一面はレモンの木が植わっていた。

最後に、ギリシャの劇場を見る。これは紀元前3世紀頃に造られたシチリアで最も大きな円形劇場だ。驚くのは巨大な自然石を削って収容人数15000人の座席を作ったことだ。

その最上部に半円状の洞窟から豊かな水が湧いていた。観光客達は、この湧水の周りで暑さを凌いでいた。
この水場を囲むように墓地が点在していた。古代ローマ人は、人が多く集まるところに死者を埋葬した。 死者もまた、あの世からこちらの世界を見たいといローマの死生観があった。
 天国の石切り場と湧水を見ながら、石切り場もまた聖所空間であると実感した。

        イタリア、カターニアにて  郡司 拝