2009/06/07

ムルガン神の聖地・パラニの岩山 

6月3日

マドゥライからバスで約3時間、ムルガン信仰の聖地、パラニに到着した。

このパラニは、岩山の上にシヴァ神の次男ムルガンを祀るムルガン寺院があり、ヒンドゥー教におけるムルガン信仰の中心地で多くの巡礼者を集めていた。

バスターミナルから少し歩くと岩山が見えてきた。これがパラニ・ヒルで、その岩上にムルガン寺院があった。遠くから見ても威厳があり、岩山の聖地性を強く感じさせる。



近くのレストランで腹ごしらえをし、それから宿を探す。数件尋ねるがすべて満室と断られる。どうも、6月初旬はいくつかの結婚式が入っているらしく、ホテルに空きがないらしいのだ。その後、ようやくムルガン寺院に近い場所でホテルを見つけることができた。そこは、バルコニーからムルガン寺院を望むことができる素敵なロケーションであった。




しばらく、ホテルで休んでから夕暮前にムルガン寺院に登る。

登山口の参道は、多くの土産物屋、参拝用の品々を売る商店が立ち並び、巡礼者に声をかけている。我々は、草履を預けて、登山口へ向かった。ヒンドゥー教の寺院は、裸足で御参りすることになっていて、このムルガン神の聖地は、岩山そのものがご神体のようで岩山への入口から裸足にならなくてはならないのだ。




登山道は、急な石段が続く坂道と、緩やかな道と二つあり、我々は急な石段を選ぶ。石段はかなり熱く、ゆっくり上ってゆく。いくつかの小さな寺院を通り過ぎた頃、樹の枝に吊るされたいくつもの布があった。




よく見ると布の中には小石を入っていた。地元の人に、この布と石のことを尋ねると、それは子供に恵まれな人が布に石を入れて子供ができることを祈願するのだという。

30分ほどで山頂に辿り着く。下からの高低差は100mあまりだった。山頂の中心にはムルガン寺院があり、その周りを数百人もの巡礼者がお参りしていた。岩山の頂上にあるムルガン寺院からの眺めは、とても素晴らしかった。

我々は、寺院に入るためチケットを求め、参拝者の後に続きながら列に並ぶ。辺りは20匹くらいの猿の群れが寺院の中を闊歩している。猿はお供えした米や、果物などを食べている。インドの巡礼者は、多くが家族連れだ。ムルガンは少年神のためか、小さな子供を連れてきている巡礼者が目立っていた。

1時間ほどで中に入ると、ご神体のムルガン神を見ることができた。巡礼者は手を合わせてムルガン神に対して熱心に祈っていた。




寺院の外に出ると、調度、日が沈もうとしていた。西の空を刻々と夕景が変化してゆく。多くの巡礼者達も、空を見上げながら太陽が沈む瞬間に見入っていた。やがて日は沈み、空に浮かぶ雲が紅く輝き始めていた。








完全に日が暮れてから、寺院の周りでは人々がそわそわとしながら何かを待っていた。それは、ゴールド・ムルガンを待っているのだ。午後7時、ある倉庫のような場所に人々は集まりながら何か儀式が行われている。やがて、松明の灯を先導にラッパの音が響き、山車の上に乗せられたゴ-ルド・ムルガンが登場した。










山車はゆっくりと人々に曳かれながら練り歩く。人々は興奮し、歓喜の声をあげながらムルガンが乗っている山車の中にコインを投げ入れていた。山車の後を追うように人々を続いていた。40分ほど経っただろうか、寺院の周りを右回りに一周して練り歩きは終了した。



ムルガン寺院には、喜びに満ち溢れた巡礼者がしばし茫然としていた。このムルガン信仰の聖地は、人々を興奮させる装置がある。



翌朝、日の出前のムルガン寺院へ向かった。岩山の山頂でご来光を遥拝したいと思ったのだ。

午前5時に起き、5時半にホテルを出て登山道を登る。数は少ないが登っている人もいる。やがて朝焼けが辺りを包み太陽が山の尾根から少しずつ顔を見せ始める。しばらく太陽に手を合わせながら見続けていた。


隣りの山に登ると、見事な巨石越にムルガン寺院が見えた。







                  チェンナイにて  郡司 拝