2009/06/07

マドゥライの二つの岩山 

南インドのマドゥライは、タミル・ナードゥ州の中南部にあるマドゥライ県の県庁で人口約110万人。

マドゥライは、かつてバーンディア朝の首都であり、1617世紀に造られたミナークシ寺院で知られるヒンドゥー教の聖地でもある。


マドゥライ近郊には、ヤーナマライ山とティルパランクンドラム山という二つに岩山があり、それぞれに共通してヒンドゥーの神が祀られた寺院があった。


ヤーナマライ山

ヤーナマライ山の岩山は、マドゥライの北10kmほどの処にあった。



岩山への登山道は所々石段になっていて、10分も登ると平らな岩盤の上に出た。

さらに奥に巨岩が起立していて、その下の絶壁に岩がゴロゴロとしていた。私は絶壁の巨岩に吸い込まれるように向かっていった。岩のまわりを巡っていると、岩盤上にペンキで画かれた大きな文字があった。










後で、地元の人に聞くとその文字はムルガン神のサインであると教えてもらう。

さらに、巨岩を上がってゆくと、ある岩屋のような場所があり水が湧いていた。その中を覗くと、一人の男性が横になっていた。この岩屋に住んでいるのかと思ったが、彼は顔を岩屋の中に向けて眠り続けていた。



岩屋から下を覗くと、立派なヒンドゥー教の寺院が見えた。私は下山して、その寺院へ向かった。

ヤーナマライ山の真下にある寺院は、ナーラシンギャーペルモルと呼ばれるヒンドゥー寺院だった。ここは、ヴィシュヌ神を祀る寺院で、その横に蓮が生えている大きな池があり、そこで何人かが沐浴をしていた。







この岩山がヤーナマライと呼ばれていることを寺院の人に教えてもらう。また、人々は早朝この岩山に登りご来光を拝むという。高さ約150m、幅は約2kmもある岩山で、別名エレファントロックとも呼ばれている。確かに、遠くから見ると巨大な像に見えなくもない。

岩山に画かれたヴィシュヌ神のサイン、ヴィシュヌ神を祀る寺院、このヤーナマライ山はヴィシュヌ神を象徴している岩山だった。



ティルパランクンドラム山

マドゥライの南西約8kmの処にティルパランクンドラム山と呼ばれる岩山があり、その山麓にムルガン神を祀るズブラマニャ寺院がある。


ティルパランクンドラム山の西側に立派な登山道を見つけ、さっそく登る事にした。


20分ほど登ると大きな巨岩の上に辿り着く。何とも雄大な岩の光景だ。しばらく岩の上にいると地元の若者も数人登ってきた。山上を見上げると、ある寺院のような建物が見えたので、その建物の事を尋ねると、イスラム教の施設だという。



我々は、さらに参道を登り岩山の峠を越えると巨大な岩がまるで大蛇のように伸びていた。





その岩の下はフェンスで囲まれ岩の窪みには、水が貯まっていた。若者は、この水は聖水として大事にされていると教えてくれた。

しばらくすると、巨岩の絶壁にへばり付くように建てられたヒンドゥー寺院が見えた。





シヴァ神を祀る小さな寺院は、まるで奥の院といった雰囲気があった。

その後、下山してこの岩山を回ることにする。ティルパランクンドラム山は、下から見ると実に存在感のある山だ。

シヴァを祀る寺院は、ほぼ垂直の岩上にあり、その真下に村があった。






最後にズブラマニャ寺院を御参りする。参道から寺院を見ると、その背後のティルパランクンドラム山が借景として実に映えていた。


二つに岩山、そこに祀られたヒンドゥーの神々とイスラムの施設。

南インドの岩山は、もともと古層の信仰を持っていたように思う。それが、やがてヒンドゥー教の神々を祀ることで取り込まれていった。そして、イスラムもやはり、岩山の重要性を形にして現している。


                      チェンナイにて  郡司 拝