2009/06/02

南インド バターボールとの再会・バラジ寺院との出会い

5月28日
ニューデリーから南インドのチェンナイ(マドラス)へ飛ぶ。
埃っぽさと、騒音で嫌気が指していたニューデリーの街と比べ、ここチェンナイの街は快適に思えた。空港からタクシーでエグモア駅周辺の宿に向かうと、車窓から見える緑豊かな風景に心が和んだ。

翌29日、チェンナイの南あるマハーバリプラムを10数年ぶりに訪ねた。ここは世界遺産でも知られる海岸寺院があるが、私はバターボールに再会したかった。
巨大な一枚岩の上にクリュシュナのバターボールは、変わらずの姿で待っていた。強い日差しを浴びて、岩はしっかりと立ち尽くしていた。岩の周りでは子供たちが滑りながら遊んでいる。


                     バターボール

     裏から見たバターボール

                    折り重なる巨岩

                       割れた岩

                  丸くくりぬかれた岩

            巨石と山羊

               メンヒル
その周辺の巨石群を眺めると、メンヒルのような岩や、丸い穴をくり貫いた岩など以前の旅では気づかなかった岩を見ることができ、あらためてマハーバリプラムの巨石群の魅力を感じることができた。

チェンナイに戻った晩、インドで最も巡礼者が訪れる南インドの聖地、ティルマラへ向かった。
ここは、ベンカテシュワー(ヴィシュヌ)神を祀る寺院があり、通称バラジ寺院と呼ばれている。

世界石巡礼に出発する前、私は「ゆとり家」の啓介さんに、このバラジ寺院の話を聞いていた。バラジ寺院は、そこで願い事を一つすると必ず叶うとされ、特にお金をお布施すると、それが何倍かになって帰ってくるとかでインド一お布施が多い寺でもある。また、ヒンドゥー教徒以外の人々も御参りに来ていて、いわば宗教を超えた聖地ともいえる。一日に数万人から10万人もの巡礼者が訪れ、祭りなどの特別の日などは、二三日も待たされることもあるいという。かのビルゲイツが、実際ここに来たかどうかは定かではないが、このバラジ寺院周辺の電力はビルゲイツがお布施で建てた風力発電ですべてまかなっているといわれていた。
そんな話しを聞いていて、私は南インドでどうしてもこの聖地を訪ねたいと思っていたのだ。

チェンナイのエグモア駅近くの旅行代理店で、ティルマナ・ティルパチのツアーがあることを知り、我々はさっそく予約した。その日の午後10:15、代理店で待っているとミニバスがやってきた。15人の乗客は、我々以外はすべてインド人だった。

翌30日の午前2時、レニグンタと呼ばれる駅近くにバスは停まり全員が降ろされる。バラジ寺院に参拝するためのチケットを購入するため順番待ちをする。


          深夜2時 チケット購入の行列
チケットオフィスには、次第に長蛇の列ができて、人々は道に座りながら待っている。待つ事4時間、朝の6時にようやくチケットオフィスが開いた。
オフィスでは、入場料一人50ルピーを支払い、右手人差し指の指紋と顔写真をとって終了した。この作業を一人の係員がするので、おのずと時間はかかる。それにしても、インド人は実に辛抱強い。
チケットを受け取ってから、ミニバスで1時間ほどティルマナへ移動し、あるホテルに到着した。ここで、30分間だけホテルの部屋でシャワーを浴びることができた。
朝食を食べ、8時過ぎに大型バスに乗り換えて、丘の上にあるティルパティへ向かう。

あるお土産に荷物を預ける。バラジ寺院の中は、一切、カメラやビデオの撮影が禁止されていた。
靴と草履も預け、裸足で寺院に向かった。


                 バラジ寺院のゲート
15分くらい歩いて、入り口で身体と荷物検査が行われた。ようやく寺院に入るための施設内に入った。あるホールのような部屋でしばらく待たされて、檻のような扉が開いた。人々は「ゴーヴィンダー」と口々に叫びながら通路へと向かった。「ゴーヴィンダー」とは、ヴィシュヌ神の名称だ。通路は2mあまりで、両サイドが鉄格子でこれまた檻のなかのよう。人々は通路に押し合いへし合い状態だった。また15mほど歩くと、通路の幅は1m程になり人々はぶつかり合いながら通らなくてはならない。しかも、なかなか進まない。ゆっくり、ゆっくりと進み、二度目の荷物検査を終え、ようやく寺院の中に入ることができたのは、並び始めて3時間以上は経過していた。
バラジ寺院の入り口は一つ、入場する人と退場する人の時間を分けていた。これでは、時間がかかるわけだ。そう思いながら中に入ると、人々はまるで渦のように動いていた。人々は興奮しながらご神体のバラジ神のある神殿中央へとゆっくり向かっていた。神殿の建物はすべて本物のゴールドでできているといわれている。人々は、ゴールドの建物に触れながら奥へと進んでゆく。黄金の寺院の中に、バラジ神のご神体がある。かすかではあるが、神殿の奥に鎮座するバラジ神を見ることができた。見た瞬間、モンゴルで出会ったエージハド(マザーロック)を思い出した。どこか似ているものを感じたのだ。
短い通路では参拝者が立ち止まらないようにスタッフが腕をつかみ、次々に外へ押し出していた。人々は歓喜の声をあげて祈っていた。


                      バラジ寺院

                      バラジ寺院

                       風力発電

         巡礼を終えた人々

明け方のチケット購入で待ってから10時間は過ぎていた。しかし、不思議と疲れは感じなかった。

聖地には、人々をひきつける地場のようなものがある。このバラジ寺院は、さらに宗教を超えた聖地性を強く発信しているように思えた。

我々は、いくらかのお布施をして南インドの聖地を後にした。


               マドゥライにて  郡司 拝